金烏玉兎(きんうぎょくと)


月日のことをのんびりと
by 木ねずみ
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フェリーニ「道」

先日、「あまりオリンピックには興味がなくて...」と
書いたのですが、
男子フィギュア、見てしまいました(笑)
見事に銅メダルを獲得した高橋選手が
競技で使用した音楽は
フェデリコ・フェリーニ監督「道」のテーマ曲。
イタリアの作曲家Nino Rotaが作りました。
ニーノ・ロータは死ぬまで自分はクラシック音楽の作曲家で
あくまでも、映画音楽は片手間に作っている・・と
言っていたようなのですが、
フェリーニの映画音楽やゴットファーザーのテーマ曲で
有名です。

学生の頃、フェリーニの作品が大好きで
ニーノ・ロータが作ったフェリーニの映画音楽集という
カセットテープ(懐かしい!)をよく聞いていました。
オリンピックが始まって、時々この曲を耳にするたびに
ジュリエッタ・マジーナ演じるジェルソミーナの面影を思い出し
どうしても、テレビ画面に引き寄せられてしまいました・・・。
ニーノ・ロータの
切ないけれど上品な音楽が、
映画を引き立てていて、心に残ります。

私がフェリーニを知ったのは
「そして船は行く」を観てからです。
世界的に有名な歌姫が死に
その弔いをするために集まった
ひと癖も二癖もある芸術家たちが、
同じ船に乗り合わせて、ある島に行くまでのお話。
船は最後、嵐にあって難破してしまうのですが、
海がスタジオセットだということがバレバレの演出で
びっくりしました。。
芸術家たちが、食器を使って
合奏するシーンがあって、印象的でした。
それから、「インテルビスタ」「8 1/2(はっか にぶんのいち)」
「甘い生活」「サテリコン」と観て
最後に「道」を観たかと思います。
「道」は、それまでの作品と作風が全然違っていたので、驚きました。
フェリーニ監督は「映像の魔術師」と言われているのですが、
そのチャーミングで、まるでサーカスの様に賑やかな映像と違って、
「道」はやるせなさの残る映画でした。

後になって、
フェリーニが「ネオリアリスモ」の最後の監督と言われている事を
知りました。
「ネオリアリスモ」は、イタリアにおいて、1940年~50年にかけて
文学と映画の分野において盛んになった潮流(ウィキペディアより)
とあるように、当時のイタリアのファシズムに対しての
一つの抵抗でありました。
有名な映画では
ロベルト・ロッセリーニ監督「無防備都市」
ヴィットリオ・デ・シーカ監督「自転車泥棒」が
あります。

「道」では3人の人物が登場します。
悪の象徴のような大道芸人「ザンパノ」。
イノセンスの象徴のような「ジェルソミーナ」。
そして、彼らを結び付ける綱渡り芸人。

ザンパノは極悪非道なことばかりする人物。
でも、
綱渡り芸人は、「世の中のどんな物にも価値がある」と
言います。
天敵のようなザンパノを心から憎めないでいるのです。
そして、ジェルソミーナも
「私がいないと、彼は一人ぼっちになってしまう・・」と言います。

なのに、ザンパノはそんな彼らを
きっぱりと切り捨ててしまうのです。
そして、何年か経って
無くしてしまったことへの後悔、
喪失感を味わう事になります。
ラスト、ザンパノが嘆き悲しむ姿には
人間の持つ愚かさと、そして
悪の塊にすらなりきれない、
弱さを感じました。

ジュリエッタ・マジーナ演じるジェルソミーナは
与えられた環境の中で
楽しみを見つけて、幸せであろうとします。
その姿が健気です。

何がいけないのか、
彼らがいけないのか?
そうではなくて、彼らの様な人物をうみだしてしまった
社会がいけないのだ、と思わずにはいられません。

私は映画は夢の世界であって欲しいと願っています。
映画を観て、暗い気持ちになるなんてうんざりです。
フェリーニも、もしかしたら、そうだったのかもしれません。
だから、映像の魔術師になったのかもしれません。
「甘い生活」以降の彼の作品には、
馬鹿騒ぎしている登場人物が目立ちます。
スタジオセットがバレバレの演出なども含めて
映画の世界は虚構の世界だけれど
だからこそ、サーカスのように
(その裏側に、例え哀しみが潜んでいようとも)
楽しくありたい、と願っていたのかもしれません。

「道」は、何といっても、ジュリエッタ・マジーナが良いのです。
お世辞にも美人とはいえないし、背も小さい女優さんなのですが、
魅力があります。
最後までフェリーニ監督と連れ添って、
彼の死を看取り、それから半年後に亡くなった
という実生活を含めて
まさに女性の優しさの象徴のような人だな・・と思います。

「道」は、娘がもう少し大きくなったら
一緒に観たいと思っています。

フェリーニ「道」_a0159795_1333232.jpg

by choco-co-co | 2010-02-21 13:31 | 映画日記

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